2013/03/06
日本内科学会雑誌の最新号(2013年2月)の特集が「動脈硬化症」でした。その論文集の中の「頚動脈エコー検査の最近の進歩」(山崎義光)が興味深い内容でしたのでまとめてみました。
頚動脈エコー検査は、早期動脈硬化の指標として有用であり、脳梗塞・心筋梗塞のハイリスク群の検出に広く用いられています。
頚動脈エコーで求めた頚動脈肥厚度(IMT)の進展度や年平均進展率と、心血管イベント(脳梗塞、心筋梗塞)に正の相関が広く報告されています。
動脈硬化の古典的危険因子(喫煙、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病)をまったく持たない対象からの心血管イベントの発症率が14%、1つのみ有するものからの発症率が43%との報告があり、心血管イベントハイリスク群を古典的危険因子だけから予測することは困難です。古典的危険因子に頚動脈肥厚度を加味することで、心血管イベントの予測能が改善することが明らかにされています。
糖尿病の指標であるHbA1c値が6.5%で頚動脈肥厚度(IMT)の年進展率が0mm/年となることが報告され、さらにIMT進展と最も関連する指標はIMTの基礎値であり、IMTが高値の場合は動脈硬化が加速的に進展する可能性があるということです。(つまりIMTの高値を認める方は積極的な治療が必要であると考えられます。)
なお糖尿病の治療薬により動脈硬化抑制作用に差がみられ、ピオグリタゾン(アクトス)>メトホルミン(メトグルコ)=αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスンなど)>グリメピリド(アマリール)=グリクラチド(グリミクロン)>グリベンクラミド(オイグルコン)の順で頚動脈肥厚進展抑制効果が強いと推定されています。(当院でも大動脈瘤など動脈硬化の強い糖尿病の患者さんには、膀胱癌や心不全に注意しながら、アクトスを処方しております。)
なお、抗血小板剤であるアスピリンとシロスタゾールの比較では、シロスタゾールの方が頚動脈肥厚進展抑制作用が強いことが示されています。
当院では、動脈硬化に縁のなさそうな中年女性や、定期的に運動している中年男性(実は筆者の同級生です)に、想定外の高度の頚動脈肥厚を認めたという経験があります。頚動脈エコー検査を一度も受けたことがない方は、ぜひ一度受けられることをお勧めします。
また糖尿病や高血圧、脂質異常症の治療を受けている方で、頚動脈エコー検査を一度も受けたことがない方は、治療の目標である動脈硬化の改善が確実に行われているのを確認するために、ぜひ頚動脈エコー検査を受けるようにしましょう。改善がみられない、あるいは増悪している場合は、治療の変更が必要になると思われます。