高松市成合町の内科・消化器内科・心療内科・精神科 大饗内科消化器科医院

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亜鉛

先日のNHK「ためしてガッテン」で亜鉛が取り上げられました。亜鉛はアンチエイジングにも関与しています。最近の報告などを中心に亜鉛についてまとめてみました。
亜鉛は生体にとって必須の微量元素であり、多くのタンパク質の構造の維持に貢献しており、300以上の酵素が亜鉛を補酵素として必要としています。亜鉛は細胞の増殖、分化、そして死がかかわる生体反応を高度に調節しています。
亜鉛は骨格筋(60-70%)と骨(20-30%)に多く存在しています。亜鉛総量の90%以上が骨格筋と骨に存在することは、これらの構造体の機能と維持にとって亜鉛がきわめて重要であることが示唆されます。
また亜鉛欠乏になると、活性酸素を消去するスーパーオキサイドジスムターゼ(Cu/Zn SOD)活性が低下するため、活性酸素の産生が亢進します。活性酸素は発癌、臓器の老化、疾病の重症化のいずれの病態にも関与するため、亜鉛欠乏はこれらの病態に深く関わります。たとえば、亜鉛欠乏では発癌予測となる変異原性試験が陽性となり、亜鉛欠乏は発癌リスクの高い病態であると考えられています。
さらに、慢性肝疾患では亜鉛が欠乏しており、亜鉛補充による肝線維化抑制効果が報告されています。
亜鉛欠乏によってみられる症状は、食欲低下、角化症などの皮膚症状、脱毛、性機能障害、創傷治癒遅延、免疫能低下、味覚低下、情緒不安定、運動失調、耐糖能低下など、臨床でよくみられる症状が列挙されます。
特に成長過程における亜鉛の重要性が指摘されており、小児での亜鉛欠乏は、急性症状としては口周囲や四肢末端の皮膚炎、易感染性、体重増加不良、慢性欠乏症としては低身長、貧血、味覚異常や易感染性などをもたらします。
筆者の経験では、褥瘡(床ずれ)をきたした寝たきりの方、味覚障害を訴える方、動脈硬化が想定外に強い方、などの患者様に血清亜鉛値の低下がみられることがあります。また十代の方にもかなりの亜鉛欠乏がみられた経験があり、リン酸化合物が添加された菓子などを多く摂取することでリンによるキレート効果のため亜鉛欠乏をきたしたものと考えております。
当院では、慢性肝炎や肝硬変の患者様では必ず血清亜鉛値を確認しており、低下傾向がみられる方にはさらなる進行を抑制するため亜鉛製剤の服用を勧めております。
血清亜鉛値は血液検査で簡単に知ることができます。亜鉛値の目安として、午前中採血(食事摂取の有無は問わない)で80~130μg/dℓが提唱されています。血清亜鉛値を測定することにより亜鉛欠乏の有無を確認することが重要であると思われます。