高松市成合町の内科・消化器内科・心療内科・精神科 大饗内科消化器科医院

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肥満・食習慣が医療費・介護費に及ぼす影響

健康増進を通じた予防的なアプローチにより国民の健康水準が向上し、医療・介護に対するニーズが減少すれば、医療費・介護費も減少するのではないか、という期待の元に疫学的研究が実施されています。表題のような論文(遠又靖丈他)が日本抗加齢協会誌「医と食」に掲載されましたのでまとめてみました。

1994年から約5万人の国保加入者(40~79歳)、2006年から65歳以上の宮城県大崎市の住民を対象に、生活習慣と介護発生との関連が分析されました。本稿では、その中から「肥満と医療費の関連」と「日本食と要介護発生の関連」の研究が紹介されています。

肥満度と医療費の関連
BMIを18.5未満、18.5~20.9、21.0~22.9、23.0~24.9、25.0~29.9、30以上の6つのグループに分けて1ヶ月あたりの平均医療費を算出したところ、医療費が最も低かったのはBMIが21.0~22.9のグループでした。このグループに比べて、BMIが25.0~29.9の過体重では9.8%、30.0以上の肥満では22.3%の医療費上昇がみられました。
平成23年度の国民医療費38兆円にあてはめた場合、1.2兆円が肥満(BMI 25.0以上)の影響によるという試算になります。

日本食と要介護発生の関連
日本食パターンの疫学研究によってこれまでに脳卒中死亡、抑うつなどとの関連が報告されています。食品別でも、日本食の主な構成成分と考えられている大豆・魚介類・緑茶は脳卒中、認知機能低下、転倒骨折において予防的な関連があることが報告されています。これらの疾患は要介護状態に至る要因として知られていることから、日本食パターンと新規要介護認定との関連が宮城県大崎市の2006コホート研究のデータより検証されました。
「日本食パターン」として魚・野菜・きのこ・いも・海草・漬物・大豆製品・果物が、その他に「動物性食品パターン」、「高乳製品パターン」が抽出され新規要介護認定発生との関連が検討されました。その結果、日本食パターンの度合いが高い高齢者では新規要介護認定のハザード比が有意に低値で、その他の食事パターンでは有意な関連が認められませんでした。なお日本食パターンについては、先行研究に基づいた別の方法でも検討されましたが、やはり日本食パターンの高い者で有意な要介護発生のリスク減少を認めました。

要介護認定者における費用額は一人あたり年換算で190万円であることから、食事内容の改善により健康寿命延伸と要介護期間が短縮できるとすれば相当な金額の介護費節減が期待されます。

香川県はうどん摂取率が日本一であることはよく知られていますが、実は菓子パンの人口当たり摂取率も日本で最も高い県であるといわれています。当院の患者様も朝は洋食の方が大変多い印象です。朝食がパン食の患者様には、将来介護に至る危険が高まることをお話して、日本食へ切り替えるよう勧めています。