2016/07/12
日本抗加齢医学会雑誌(2016年vol12)に「男性のアンチエイジングとテストステロン」が特集されました。その中から「中高年男性うつ病とテストステロン」(渡部芳徳ら)をまとめてみました。
男性更年期障害(LOH症候群)は、中年男性の男性ホルモン(テストステロン)低下に伴う、身体症状(身体の痛み、筋力の低下)、精神症状(抑うつ気分、不安、不眠)、性機能症状(性欲減退、勃起力の低下)を主体とします。
LOH症候群は30代後半から増えますが、特に中高年男性のうつ症状と関連します。
LOH症候群治療の基本はテストステロン補充療法です。うつ症状に対してテストステロン補充のランダム比較試験により、うつスコアの有意な改善を認めたとの報告があります。本論文の執筆者、渡部氏のクリニックでは、抑うつ気分の男性患者さんのうち加齢男性症状スコアが高値の患者さんにはフリーテストステロン値を測定し、低値の場合はテストステロン補充療法も考慮しているということです。
うつ病患者さん(特に中高年男性)は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を合併しやすい上、これを悪化させやすいとされます。こうした患者さんの背景にあるうつ病を治療しないと生活習慣病の改善は望めません。中高年男性の生活習慣病治療には、背後に潜むうつ病の存在に気づくことが重要です。
うつ病などの気分障害患者は非常にバランスの悪い食生活の人が多いとされます。気分障害との関連が示唆されている栄養素は、葉酸を含むビタミンB群、EPA・DHAなどのn-3系脂肪酸などです。
葉酸はビタミンB群の一種で、葉酸不足による脳梗塞や認知症、大腸癌との関連が指摘されています。ビタミンB群は男性のうつ症状と負の相関、双極性障害の身体症状と負の相関を示します。
n-3系脂肪酸は脳内リン脂質として存在します。 n-3系脂肪酸 などの不飽和脂肪酸が男性において不安症状と負の相関を示し、双極性障害患者においてn-3系脂肪酸が不安症状と負の相関を示します。
気分障害、特にうつ病・双極性障害患者さんの復職や再発予防に食事療法を行う意義があると考えられています。