高松市成合町の内科・消化器内科・心療内科・精神科 大饗内科消化器科医院

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骨粗鬆症の時間治療

骨粗鬆症に伴って生じる骨折は高齢者が寝たきりになる原因の第三位であり、アンチエイジングのためにも注目すべき病態です。日本医事新報(2013/6/15)に、「骨粗鬆症の時間治療」(藤村昭夫)と題する興味ある文献をみつけましたのでまとめてみました。

加齢に伴って腸管でのカルシウム(Ca)吸収が低下し、血中Ca濃度が低下します。これを代償するために副甲状腺ホルモンの分泌が亢進し、副甲状腺ホルモンは骨を壊し(骨吸収)、低下した血中Ca濃度を上昇させます。
ヒトでは、一般に夜間に骨形成が亢進し、昼間に骨吸収が亢進します。その結果、夜間にはCaが骨組織に取り込まれるために血中Ca濃度は低下し、さらにそれを代償するために血中副甲状腺ホルモン濃度は上昇します。このような骨代謝における日内リズムは老人性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症ともに認められます。閉経後骨粗鬆症では血中副甲状腺ホルモン濃度は1日を通じて上昇していますが、昼間に比べて夜間のほうが高くなります。

活性型ビタミンD3(エディロール、アルファロールなど)
活性型ビタミンD3は、骨量維持効果と椎骨骨折予防効果を有していますが、副作用として高Ca血症を来しやすくなります。活性型ビタミンD3の午前8時投与と午後8時投与を比較すると、血中Ca濃度の上昇は午前8時投与群のほうが大であり、一方血中副甲状腺ホルモン濃度の低下およびそれに伴う骨塩量の増加は午後8時投与群のほうが大でした。すなわち、活性型ビタミンD3の時間治療(夕食後投与)は安全性とともに有効性にも優れた投与法といえます。

カルシウム
Ca補給は、Caの負のバランスを是正し、血中副甲状腺ホルモン濃度を低下させることによって骨量減少抑制効果をもたらします。これまでの報告では、骨吸収マーカーなどを指標に検討すると、骨粗鬆症患者に夜Caを投与したほうが、午前中に投与するよりもより大きい効果が得られています。

ラロキシフェン(エビスタ)
ラロキシフェンは、破骨細胞の作用を阻害することによって骨吸収を抑制します。しかし、ラロキシフェンは副作用として深部静脈血栓症の危険性を増大させることが知られています。血栓を溶解させるプラスミノーゲン活性化因子インヒビター濃度(PAI-1)を指標にした検討では、ラロキシフェンを朝投与した群ではPAI-1が有意に上昇したが、夕投与群ではPAI-1の上昇は認めなかった、と報告されています。PAI-1が上昇すると静脈血栓が形成される危険性が高まるため、ラロキシフェンは夕投与するほうがより安全であると考えられます。

骨粗鬆症に用いられている薬物には、投与時刻によって安全性や有効性が異なるものがあり、特に上記の薬物は、夕食後投与あるいは就寝前投与がより有効であり、安全性にも優れているようです。
筆者も多くの患者様に活性型ビタミンD3を投与していますが、順次朝食後投与を夕食後あるいは就寝前投与に切り替えています。